キリストを見る心

2025年2月1日・2日　顕現後第四主日

福音書 　ルカ4:21～30 (新108)

4：21そこでイエスは、「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した」と話し始められた。 22皆はイエスをほめ、その口から出る恵み深い言葉に驚いて言った。「この人はヨセフの子ではないか。」 23イエスは言われた。「きっと、あなたがたは、『医者よ、自分自身を治せ』ということわざを引いて、『カファルナウムでいろいろなことをしたと聞いたが、郷里のここでもしてくれ』と言うにちがいない。」 24そして、言われた。「はっきり言っておく。預言者は、自分の故郷では歓迎されないものだ。 25確かに言っておく。エリヤの時代に三年六か月の間、雨が降らず、その地方一帯に大飢饉が起こったとき、イスラエルには多くのやもめがいたが、 26エリヤはその中のだれのもとにも遣わされないで、シドン地方のサレプタのやもめのもとにだけ遣わされた。 27また、預言者エリシャの時代に、イスラエルには重い皮膚病を患っている人が多くいたが、シリア人ナアマンのほかはだれも清くされなかった。」 28これを聞いた会堂内の人々は皆憤慨し、 29総立ちになって、イエスを町の外へ追い出し、町が建っている山の崖まで連れて行き、突き落とそうとした。 30しかし、イエスは人々の間を通り抜けて立ち去られた。

今日の聖書の物語は先週の続きです。イエス様がお育ちになったナザレに来られて、ナザレの会堂でお教えになった話を読んでいきます。イエス様はナザレの会堂で預言者イザヤの書を読み上げ「私こそが預言者によって預言されていた救い主（メシア）である」ということを宣言されました。すると皆はイエス様をほめ、人々はその恵み深い言葉に驚きました。彼らはイエス様の教えに心底感銘を受けたのです。しかし一方で彼らは「この人はヨセフの子ではないか。」と考え始めます。あのイエスという男は近所のヨセフの息子、祭司の家に生まれたわけでもないのに、どうしてあんなに立派な教えができるんだろうか、そう思われたからです。

そうして人々はイエス様を追い出してしまいます。会堂から追い出すばかりか、町の外まで追い出して、さらに崖から突き落とそうとしました。せっかくイエス様が救いのありがたい知らせを持ってきてくれたのに、人間の思考はそれを受け入れられず、自分の視界から追い出そうとしてしまいます。イスラエルの民が何百年も待ち望んだ救い主が、身近な人の姿で今目の前にいるということが人間には理解できなかったのです。

私たちは聖書を読んでいるので、イエス様が今ここにきて、この教会で同じことをしてくれたら歓迎するかもしれません。私たちは知識によってイエス様が救い主だと知っているからです。でも私たちにもまだ気づいていないことがあるのではないでしょうか。それは、イエス様が私たちの心に送ってくださっているメッセージを私たち自身が追い出していないかということです。ナザレの人々がイエス様にしたのと同じことを、自分自身にしていないかということです。

イエス様はどんな時も、私たちを守り、救いを与え、恵みで満たしてくださっています。しかしそのことに私たちは十分気付くことができているでしょうか。イエス様が私たちを守ってくださっている、救いを与えてくださっている、恵みで満たしてくださっている、というメッセージは、実際の信仰生活においては、自分の感覚、自分の信仰、自分の経験を通して与えられるものです。しかし私たちはそれを疑ってしまいます。こんな自分を通してなど、神様はお語りになられないと心のどこかで思っているからです。

私たちはイエス様を信じられても、神様が造ってくださったこの自分、イエス様が与えてくださったこの信仰、聖霊が教えてくださっているこの感覚、を信じることができずに生きています。私など大した存在ではない、私の信仰なんてあるのかないのかわからない、私の感覚なんてただの思い込みであると思って生きているのです。だから私たちは、自分に与えられた神様からのメッセージを、自分の中から追い出して、自分の目に入らないように、崖から突き落とそうとしてしまいます。

そうして私たちは、イエス様が目の前に来てくれたら信じられるけど、そうでなければ何を信じていいのかわからないという状態に陥ります。でもそうやって思っているうちはイエス様が目の前に来てくれたって信じることはできません。なぜか。神様から差し出されたものを受け取ることができなくて、もっともっとわかりやすい証拠が欲しくて、それが得られないならすぐに追い出して崖の上から捨ててしまうという癖がついているからです。

私たちはまず、自分を信じ、自分の内なる声を聞く必要があります。それは自分の目に見える部分を信じるということではなくて、神様がお造りになったこの自分が、神様の一部であると信じるということです。自分のうちに宿るこの信仰が、イエス様が与えてくださったものであると信じるということです。この地上にあって神を感じるその感性が、聖霊の働きによってもたらされたものであると信じるということです。

自分という存在も、信仰も、感覚も、それらは一見「私」の形をしていますが、すべては神様から与えられたものです。私たち神の子は、いつも神様と一つです。私たちが「私」を取るに足らないものとして拒絶する限り、私たちは神様から離れてしまいます。私たちが「私」の内なる声に耳を塞ぐ限り、私たちは神様の声から遠ざかってしまいます。

それは、ナザレの人々がイエス様を追い出してしまったのと同じくらい、私たちにとってもったいないことです。神様の救いは、聖書の中だけにあるのではありません。それは私たちの中にあります。神様の恵みは教会の中だけにあるのではありません。それは私たちの人生全体に注がれています。聖書だけでは、教会だけでは、神様の御心は完結しません。それを受け取る「あなた」が必要であるのです。あなたの救いを受け取るのは、聖書でも教会でもありません。それはあなた自身であり、あなたの中にある、神様が与えてくださった信仰です。

ナザレの人々はイエス様が救い主であることを拒絶しました。イエス様があまりにも身近で、自分と似たような生活をしていたからです。私たちも同じように、神様が与えてくださる恵みを拒絶してしまいます。それがもっとも身近な「私」を通して与えられるからです。時に私たちは自らが神様の作品であることを忘れて、私など大したことない、私には価値がないと思い込みます。そしてそのことが、神様から私たちを遠ざけてしまいます。

しかしイエス様は今日も、私たちのところに、私たちにとって身近な姿で現れ、この私の信仰、この私の生活、この私の霊を通して語りかけてくださっています。その声を追い出してしまうのはあまりにももったいないことです。私たちの信仰は神様に与えられた信仰、これ以上のものもこれ以下のものもありません。神様の前に、その信仰を開きましょう。今のこの自分で、私たちはイエス様の救いを受け取ることができます。この一週間も、私たちの日々が神様がくださるもので満たされますようにお祈りいたします。

2月1日・2日　教会の祈り

司）祈りましょう。

全能の神様。日本福音ルーテル直方／門司／八幡／小倉教会を祝福してください。これからも直方／門司／八幡／小倉教会を導いて、あなたの器(うつわ)として用いてください。私たち一人ひとりにこの筑豊／北九州の地にあって礼拝し、宣教する喜びを与えてください。

恵みの神様。本日開催される八幡教会の定期総会をお守りください。私たちが教会の未来について希望を持って語り合うことができますように。北九州地区の変化の時にあって、教会員一人ひとりが祈りを合わせ、力を合わせることができますように。次週開催される直方教会の定期総会もあなたがお守りください。そして門司教会と小倉教会の定期総会が無事に終わったことを感謝します。

主なる神様。み子イエスはナザレの会堂で、ご自分が神から遣わされた救い主であることを明らかにされました。イエス様の言葉を聞く私たちに、疑いではなく信仰を増し加えてください。私たちが思い込みにとらわれず、備えられた神様からのメッセージに出会うことができますように。

私たちの主イエス・キリストによって祈ります。

会）アーメン