top of page

羊の門

2023年4月30日 復活節第3主日

ヨハネによる福音書10章1~10節


福音書  ヨハネ 10: 1~10(新186)

1「はっきり言っておく。羊の囲いに入るのに、門を通らないでほかの所を乗り越えて来る者は、盗人であり、強盗である。 2門から入る者が羊飼いである。 3門番は羊飼いには門を開き、羊はその声を聞き分ける。羊飼いは自分の羊の名を呼んで連れ出す。 4自分の羊をすべて連れ出すと、先頭に立って行く。羊はその声を知っているので、ついて行く。 5しかし、ほかの者には決してついて行かず、逃げ去る。ほかの者たちの声を知らないからである。」 6イエスは、このたとえをファリサイ派の人々に話されたが、彼らはその話が何のことか分からなかった。

7イエスはまた言われた。「はっきり言っておく。わたしは羊の門である。 8わたしより前に来た者は皆、盗人であり、強盗である。しかし、羊は彼らの言うことを聞かなかった。 9わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる。その人は、門を出入りして牧草を見つける。 10盗人が来るのは、盗んだり、屠ったり、滅ぼしたりするためにほかならない。わたしが来たのは、羊が命を受けるため、しかも豊かに受けるためである


今日から日課は復活のエピソードを離れてヨハネ福音書のイエス様のお話に移ります。今日の聖書の箇所では、イエス様がご自分を「羊の門」にたとえておられます。羊の門のたとえがあらわしているのは、救いに至る唯一の扉としてのイエス様の姿です。聖書の時代、たいていの町は壁で囲まれていました。壁に開いた門は人々の集会所となり、夜になるとその門は閉められて人々を敵の襲来から守りました。


羊もまた囲いの中で飼育されました。昼間羊たちは放牧されていますが、羊飼いたちは夜になると石を積み上げた塀の中に羊を導き、その囲いの中で羊たちを休ませました。羊を野獣から守るためです。その囲いには門があり、門には門番が置かれました。羊を盗みに来る人がいるからです。門番が門を開くのは羊飼いに対してのみ、本当に羊を愛し、羊の名前を知り、羊の世話をする人に対してだけです。羊たちは門の中にいる間、守られています。そして門が開き、羊飼いに導かれて門を出ると、牧草を見つけて生きる糧を得ることができるのです。


羊の群れは、門によって守られ、門を通る羊飼いに導かれ、門を出入りして命を養われます。イエス様はご自分がこの「門」であると言われるのです。私たちは、イエス様という門によって守られ、イエス様という門を通って救いをいただくからです。門を入る者は救われ、門を出る者は糧を得る。このたとえは、メシアは人々に救いを与え、また日ごとの糧を与える者であるというキリスト論を示しています。


この門を通らずして私たちに近づく者はみな盗人だとイエス様は言われます。人々を搾取する宗教的指導者や人々を惑わす偽預言者をこのようなたとえで警戒しているのです。それは私たちを滅ぼすものです。だから、私たちはイエス様という門を通ってくる良いものと、門を通らないで近づいてくる悪いものを、区別しなければならないとこの聖書の箇所は語っています。


さらに面白いことに、聖書はその区別を誰でも自然とすることができると書いています。2節には「羊は羊飼いの声を聞き分ける」と何の疑いもなく記されているのです。あなたはイエス様を通して呼びかけられる声を必ず聞き分けることができる、神があなたの名前を呼ぶとき、あなたはそれに付いて行くことができるというのです。そしてそれは、私たちの努力と根性によるものではありません。聖書によれば私たちと神様との関係は本来そのように創られています。


イザヤ書 43 章 1 節は「ヤコブよ、あなたを創造された主は/イスラエルよ、あなたを造られた主は/今、こう言われる。恐れるな、わたしはあなたを贖う。あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。」と語ります。ヤコブに限らずとも人はみな、その存在の初めから、神によって名前を呼ばれ、神によって知られているのです。だから、私たちもまた、存在の深いところで神を知っています。のんびりして見える羊でも羊飼いの声だけははっきりと聞き分けるように、頼りない私たちにも神様とそうでないものを見分ける何かが与えられています。


ですから私たちがこのたとえ話から受け取るのは、自分がこの呼びかけに応えられるだろうかという不安や恐れではなくて、神は必ず私にわかるように語り掛けてくださるという信頼です。羊の門としてのイエス様が、神を通ってくるものとそうでないものを、私たちに示してくださるという安心です。私たちは今日もイエス様という門によって守られています。そしてイエス様という門を通って救いをいただいています。そのことに安心してこの一週間も過ごしてまいりましょう。



Comments


bottom of page